夏色の恋【完】
長谷川さんといる時とは違う感覚。



幸せとは違うけど、楽しいと感じる。



麻衣と一緒にいる時にも楽しいと思うけど、それとはまた何かが違った。



「あのさ……。明日、どっか行かねぇ?」


ふいに北斗が言った。


「何?デートのお誘い?」

「ちげぇよ。明日、海の親父さん達帰って来るから…」


そこまで言って、

『親子水入らずってヤツだよ……』と、少し小さな声で北斗は付け足した。


「そうなんだ……。あんたっていい子ね」

「あぁ!?子供扱いすんじゃねぇよ」


ふてくされたように北斗が言った。



北斗の話によると、明日麻衣の両親が久しぶりに帰って来るらしい。



夜にはまた海外に戻ってしまうみたいなので、その間だけでも親子だけで過ごした方がいいんじゃないかと北斗は言った。


北斗なりに気を遣っているんだと思った。



「デート、どこ行こっか?」

「デートじゃねぇし!」


からかうとムキになる北斗が、なんだかかわいかった。



口は悪いけど、16歳の北斗なりに気を遣っている。


中学生の時から麻衣の家で暮らすようになった北斗。


きっとこうして、気を遣いながら生きてきたんだろう。



そういう部分は私と似てるかもしれない。
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