夏色の恋【完】
「5回撮るんだって」

「あっそ」



1回目も2回目も、不機嫌そうな顔をする北斗。


「ちょっとくらい笑いなさいよ」

「おもしろくもねぇのに笑えるかよ」



本当に写真嫌いなんだ…。


私は北斗の顔を覗き込んだ。



「あんたって…、よく見ると犬みたいな顔してんのね」


じっと顔を見て真剣に言う私に、


「てめぇ、ふざけんな!」


北斗が怒り出す。


「お前こそ、こんな派手なヒラヒラした服着やがって!孔雀か」

「孔雀って…。てか、派手って何よ!」

「派手だろうが!」

「あんたの髪の色の方が派手じゃん!」

「あ?そんな真っ黒な貞子みたいな髪の毛のヤツに言われたくねぇよ」



2人でプリクラの小さな箱の中で言い合いになった。


その間にもシャッターは切られていて、最後だと思われるパシャっという音が聞こえたと同時に、揉めていた私と北斗の唇が一瞬重なった。


大騒ぎしていた間の軽い事故だった。
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