夏色の恋【完】
「ね、ご飯食べようよ!お腹すいちゃった!」


私はわざと明るく言った。


「ですね!何食べます?あ、ピザとっちゃいます?」


麻衣も明るくはしゃいで答えた。



少し無理してるような感じもしたけど、麻衣が何も言わないから、私は何も聞かない。


『何かあったの?』

なんて、軽く聞けない。

『何かあるなら聞くよ?』

なんて、軽く言えない。


きっとそんな簡単なものじゃない。



もしかしたら、両親があまり家にいなくて寂しいのかもしれない。


もっと他に何かあるのかもしれない。


他人からしてみれば些細なことかもしれないけれど、麻衣にとったら重要なことなのかもしれない。


どんなことでも、きっと本人にしかわからない。


麻衣のことは麻衣にしかわからないし、私だってそう。



人の心なんてそんな簡単じゃない。
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