夏色の恋【完】
「北斗、私にも私の親にもワガママなんて言わないし、遠慮がちで…。きっとすごく気を遣ってると思うんです…」


麻衣はプリクラを見ながら寂しそうに言った。


「学校から帰って来てもすぐ出掛けるし、よく友達の家にも泊まったりしてるみたいで…」

「そうなんだ…」

「夏休みになっても、ほとんど家にいなかったんです…。里緒菜さんが来てからですよ。毎日帰って来るようになったの…」


そしてプリクラから私に目を移すと、


「里緒菜さんが来てから、北斗なんだか楽しそう」


優しく微笑んでそう言った。



私は麻衣の話を聞きながら、昔の自分を思い出した。



きっと、麻衣の両親も麻衣も北斗に優しくて、海くんだってそう…。



でも“家族”じゃない北斗は、いつも気を遣っていて……。


だから友達の家に泊まったり、今日みたいに麻衣の両親が帰って来る時は家にいなかったりするんだろう。
< 54 / 134 >

この作品をシェア

pagetop