夏色の恋【完】

聞けなかった言葉

次の日から、私は北斗と同じ時間を過ごした。


と言っても、北斗は朝から夕方までバイトに行くので、一緒にいるのは夜ご飯の時間だけだった。



数日そんな日が続いて、ふと何のバイトをしているのか気になり北斗に聞くと、


「カフェ…っつうか、喫茶店っつうか…」


と少し曖昧に教えてくれた。



暇だったし、何となく北斗の働いている姿が見たくなって、場所を聞いて訪れてみた。


そこは喫茶店ではなく、お洒落なカフェだった。


窓際の席に座ってアイスコーヒーを飲みながら、北斗の働く姿を眺めた。


白いシャツに黒いエプロンをした制服がよく似合っていて、テキパキ働く北斗が少しかっこよく見えた。



時々、若い女の子のお客さんから、


「北斗くん」


なんて声を掛けられていて、モテるっていうのは本当だったんだ、と実感した。


声を掛けられるたびに微笑む北斗は、いつもの北斗じゃなくて、私の見たことのない北斗だった。


けど、見たことのない優しい笑顔の北斗を見てると、なんだか気分が悪かった。
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