夏色の恋【完】
麻衣は北斗のことをそう話しながら、


「そんなお母さんを見てるの、辛かったんだと思うんです…」


と寂しそうな目をした。



お金があるからといって、幸せとは限らない。


北斗は小さいながら、そう感じていたのかもしれない。


寂しそうな顔をする母親を見て、小さい心を痛めていたのかもしれない。



もしかしたら、私に言った『楽しいの?』という言葉は、そんな想いからだろうか……。


母親に聞きたかったけど、言えなかった言葉。


亡くなってしまった今では、もう聞けない。


それで本当に幸せなのかと、言いたかったのかもしれない。



『楽しいの?』


じゃなくて、


『幸せなの?』


と、もしあの時聞かれていたら、私は答ていたんだろうか……。


いや、そんな質問に答えることができたんだろうか……。
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