夕暮れ
明日の朝帰ろうと思っていたけど
結局終電に乗ってしまった




駅に着くと
タクシーに乗り
家へと急ぐ

タクシーの運転手は
たわいもない話をはじめる


それを軽く返事をしながら聞き流す


さすがに猛寝てるかな?


そんなこてを思いながら
外をぼーっと見ていたら

見覚えのある人影が

…猛だ…

「あの!ここでいいです!」

慌てて運転手に話かけると
まだ何か話していた運転手は少し反応が遅く

俺が言ってから
随分遅れて

慌てて

「エッ?ここで?」

と言い、ブレーキを踏んだ




猛を随分追い抜いてしまった



お金を払い

猛が歩いていた方向をみた。




姿が見えない

俺は猛のいた方向へ歩き出す



暗闇の中から
猛の姿が浮上ってきた




「猛」

少し距離があったけど
夜中の静けさのなか
充分声は届いた



猛は
立ち尽くしていた



どうしたんだろ?



走って近付くと
慌てて顔を隠した


「猛?どうかした?」



顔を覗きこむと
手で目を塞がれた


「何でいるんだよ…」

「終電間に合ったから」

「…先輩は?…」


「会ってたよ。帰ったけどね。猛…手放してくれる?」


慌てて猛は
手をのけた



「何か…顔赤いよ?」

熱あるのかな?

おでこに手をやろうとすると

「熱ないから」
と先に言われた




「昇の家いっていい?」

猛は
歩きだす。


行きなれた俺の家に向かって。






俺も歩き出した



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