夕暮れ
視線に気がついたように
猛が、昇の手を取った。



「あ。わりぃ」

昇は、ほんとに忘れていたように言った。



「おれ…居てもなんだし、かえるな。」

猛は笑って言った。

でも、何となく
いつもの気持ちいいくらい晴れやかな笑顔ではない。


「ん?ああ。おれも帰るよ」

悩む様子も無く、普通にいう昇。

ちょっとまってよ!!
それおかしいじゃん!


心ではそう思いながらも
なぜか言えなかった。






「居ろよ。話、途中だろ?」

猛がこちらを伺いながら言ったけど
昇は別に気にしていない様子だった。




「ん?もう終わったよな?」

普通に言われて

ちょっと待って!
なんていえなかった。







「うん。また連絡するね。」



わたし・・・ばか?


丁寧に手まで振って。


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