僕のお姉ちゃん
「……怖かったんだよ」



ふいに、春はぽつりといった。

それから襲われたときの状況を、話し始めた。



傷に触れながら、

髪の毛に触れながら、

唇に触れながら、


……流れ落ちた涙に触れながら。



最後に、春はこういった。





「私は、めちゃくちゃ泣いたよ。その理由はね、怖いからっていうのもあった。でも……悠が、7歳のちっちゃい悠が、こんな怖い思いしてたのかと思ったら、自然と泣けてきたんだよ」





春は泣きながら、俺を強い力で引っ張った。


ぎゅっ、と抱きしめてくれて。



一瞬、体が硬くなったけれど



……俺は拒もうとはしなかった。
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