僕のお姉ちゃん
「えーっと、1時限目なんだっけ?」

「国語」

「じゃ、国語辞典か!」



教材室は、薄暗くて嫌いだ。


ほこりっぽいし、窓がひとつしかないから風通しも悪けりゃ光も入ってこない。

まるで牢屋だ。



……姉貴


ぽつりとつぶやいた。


今、姉貴はこんなところにいるんだ。

当然といえば当然かもしれない。俺たちをあれだけ傷つけたんだから。


でもなぜか、教材室にいると

そんな姉気がかわいそうに思えてくる。



なんとなく、孤独だからかもしれない。



「悠? ぼーっとしてないで持って!」

「あ、ごめん」



俺には春が、大切な彼女がいるから、孤独を感じないけれど。


姉貴には今、そんな存在がいない。

そんな孤独が、この、少し世界からずれたような教材室にも、あるからかもしれない。
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