六等星の一生
「あの方には解らないのだ。この私の苦しみが。すでに老いた身に、今この時をいかに生きようとしていくかと考えている私の葛藤がどうして理解できるだろう」
 六等星はそう言って、さらに深くなげきました。
 するとまた、その六等星のそばを一羽の鳥が通りかかって言いました。
「もしもしそこのお星様、北極へ行くのにはこちらでいいのでしょうか」
「ええ、鳥さん。間違いありません。そちらが北極ですとも」
「ありがとう。時に何かお悩みのようですが、私で良ければどうぞお聞かせ下さいな。私はこれまで世界を旅し、色々見聞きしてまいりました。何かお役に立てるかもしれません」
 そう鳥に言われ、六等星は話してみました。
「それならお聞き下さいまし。私は六等星と言う小さな小さな星ですが、その光も姿も、この大空の中にかき消え、地上からはそこにないもののように見られているのです。私はぜひとももっと大きく強く輝き、全ての生き物を明るく照らす天命をたまわりたいのです」
 それを聞いて、鳥はしばらくの後、答えました。
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