六等星の一生
<三>
 五百年の時が流れても、六等星はまだ空をあてもなくさまよっていました。
 いつかの若さは見る影もなく年老い、もともと小さかった光も、さらに弱くなっています。
 それでもまだ六等星は、自分の願いを捨て去れはしないのでした。


 巡り巡って、六等星はいつか自分が始めにいた空へやってきていました。
 そこではかつての仲間だった五等星や四等星のような星達は居ませんでした。
 みんな全て、この五百年の内に地上へ落ちていったのです。
 やたらに開けた濃紺の空に、ただ一つ、小さく光る星がありました。
 それはいつか、この空で一番強く大きく輝いていた一等星に違いありませんでした。
 弱く小さくなった一等星の姿に、六等星は驚き話しかけました。
「一等星さん、一体どうしたのですか。あんなにも強く美しい姿だったあなたが、このありさまはどうしたというのです」
 その声に、一等星はちらちらと弱い光を瞬かせて、細い声で答えました。
「ああ…あなたはいつだったか、ここから去っていった六等星さんですね。なに、私もとうとう流れ星になる時が来たのですよ」
 それを聞いた六等星は、信じられないような気持ちになって言いました。
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