ノースマイル
「……そうだ」
ピアスのことを思い出した。
もう可能性でもなんでもない、これもただのガラス玉だな……
「これ、落ちてた」
さっさと返してしまおう。
自分が恥ずかしい。
ピアスを見た雪は、少しだけ眉を寄せたように見えた。
「自分で返したらいいじゃないですか」
「え?」
「店長に」
……店長のかよ!
どこまでも恥ずかしい奴だな俺は……
救いようがないよ。
「……店長こんなのつけてたっけ」
「はい。たまに」
バイト先の店長は、初老の男。
未だに自分が生きた青春時代を体現するような格好をしている。
納得だよ。
店長なら着けてるかもしれない。
派手好きだし。
「小ぶりだし女物かと思ってさ……てっきり相坂かと」
「わたし、穴開けてないです」
そう…です、か……