ワタシの中の少女

少女と少年

彼が無邪気に見えるとかってあるよね。でもここでいう「少年」は大人の中の子供っぽさでなくて、少年の時に少年に浸りきれず早くから大人になる事を無意識に課してきた人の事をいいたい。
彼はそういう意味では被害者というか適応が上手くいかなかった人なんだよね。
ワタシだって完璧じゃあないから、とやかく言えないのは承知している。
親と結婚する訳ではないけど、やっぱり彼らの影響は結婚してからヒシヒシ感じた。
ワタシは彼らの家に新風を吹かすつもりでいたのに彼らにとってはそれはとんでもない事だったんだ。
何とか早いうちに自分たちの世界観に同化させようという強い思いがあった為、かえって軋轢を生み出して当初からかなりギクシャクしてしまった。
追えば逃げられ逃げれば追われって事あるよね。ワタシは普段大人しいけれど自分が納得できない事にはイエスって言わない頑固さもあるんだ。
カワイイ嫁を演じる事で愛されるのは知ってたし、そういう世渡り上手な友達もいたけれどワタシにとってそれはできなかった。
不器用なんだよね。人と駆け引きするのとか苦手なんだ。真っ直ぐストレートな付き合いしかできない。
ワタシの中の少女はワタシの周りから囁かれる「引っ込み思案」や「大人しい」「素直」なんて当時言われたコトバに囚われていたんだ。だけどね、これはみんなが経験することでしょう?周りから言われていたとしても其処にいつしか疑問を持って自分なりのアイデンティティを見つけていくのが殆どだと思う。
ワタシはそれらの仮面の下に隠されていた本来のワタシ(少女)をもう隠す事はできない。
彼女は時折ふと囁いてくる。現状に満足できないなら動きなさいと。
今できればきっとためらいなくそうしていただろう。でも、そうするにはあまりにリスクがついてしまうのだ。ワタシはあの子供たちから父親を奪うことをまだ躊躇っていたから。いい父親かどうかはあの子たちが決めるんだものね。
でも気持ちにウソをつきながら暮らしていくのは堪えられなくなってきた。
ガマンしていくのはワタシを否定して生きてく事になる。だけど、ワタシだけの体ではないという責任感でがんじがらめのワタシは、囁いてくる少女をなだめながら、自分に言い聞かせ続けていた。
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