【短編】お願い、ヴァンパイア様
不定期に行われるフリマの、その中の一店舗。
とても怪しげだから、人は近寄らない。
だからこそ、わたしは気になったの。
勇気を出してこっそり覗き込んだら、いかにも童話に出てきそうな魔女みたいな人がちょこんと真っ黒のレジャーシートに座っていた。
漆黒のローブといいたくなるような衣装に、とんがり帽子。
夏に近づくこの季節に、目を疑いたくなる格好だ。
売主、店の雰囲気に比例するように、商品もかなり奇怪。
蝋燭やら魔方陣が描かれたシート、さらに売主とおなじ衣装、なぜかコポコポと泡が吹き出している瓶。
とにかく、妙なものを挙げたらキリがないくらい。
そして、わたしの目に入ったものは………
…―とても古い本。
すこし誇りっぽくて、背表紙には英語みたいなよくわからない文字が連なった本。
だけど表紙のカバーには、小さな文字で『翻訳』という言葉の後に日本人っぽい名前があった。
っぽい、といったのは、あまりにも古いせいなのか文字がつぶれていたから。
それのせいもあって、わたしの中にあった警戒心は、少しだけ解けたんだ。
声も張らない売主の前に、ちょこんと座り込む。
そっと手を触れようとしたとき。
とても怪しげだから、人は近寄らない。
だからこそ、わたしは気になったの。
勇気を出してこっそり覗き込んだら、いかにも童話に出てきそうな魔女みたいな人がちょこんと真っ黒のレジャーシートに座っていた。
漆黒のローブといいたくなるような衣装に、とんがり帽子。
夏に近づくこの季節に、目を疑いたくなる格好だ。
売主、店の雰囲気に比例するように、商品もかなり奇怪。
蝋燭やら魔方陣が描かれたシート、さらに売主とおなじ衣装、なぜかコポコポと泡が吹き出している瓶。
とにかく、妙なものを挙げたらキリがないくらい。
そして、わたしの目に入ったものは………
…―とても古い本。
すこし誇りっぽくて、背表紙には英語みたいなよくわからない文字が連なった本。
だけど表紙のカバーには、小さな文字で『翻訳』という言葉の後に日本人っぽい名前があった。
っぽい、といったのは、あまりにも古いせいなのか文字がつぶれていたから。
それのせいもあって、わたしの中にあった警戒心は、少しだけ解けたんだ。
声も張らない売主の前に、ちょこんと座り込む。
そっと手を触れようとしたとき。