【短編】お願い、ヴァンパイア様
 私の言葉を聴いて、真紅の瞳を見開いたレン。

絶句とは、まさにこのことなのかもしれない。


「レンの命も助かって、わたしの恋も叶うなら、誰も悲しまないわ!」


 ニコリと微笑んでみたのだけど、未だきょとんとする姿にだんだん不安になる。

このまま黙って帰られてしまっては意味がない。


 折角洋服も買ったんだし、ね。


 言い訳がましく、ドキドキとレンの言葉を待つ。



「……っぶ」


 初めてみるレンの笑顔。

キュン、と胸が泣いたのは……きっと、気のせい。


「お前、泣き虫のクセに根性あるな」

 なんだかいままでのレンの雰囲気とは一変して、わたしは戸惑いを隠せなかった。


 出逢った時真紅の瞳は、何を捕らえているかわからなくて怖いと思っていた。

でも今なら、すごく優しい色に見える。


 レンが笑うなら、わたしも嬉しい。



「では、お手並み拝見といきましょう?」

 意地悪く目を細めたレンに、あたしは誤魔化すように大きく頷く。


 どうか、レンの命を助ける方法がみつかりますように。



 今のわたしは、それだけが頭の中を支配していた。




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