【短編】お願い、ヴァンパイア様
「うっわぁ、なにこれ……」

 そのフリマの一角。

ぱったり客がいないお店があった。


 そこはいかにも不気味な道具や衣装が展示してあり、売主もまた、魔女みたいなローブを羽織っていた。

そして、一番の目玉商品なのか、分厚い一冊の本が手前においてあった。


刹那、再びわたしの頭に激痛が走る。


 ジジジ、とまたノイズがかかった映像。

そこにはこの目の前にいる魔女みたいな人がいた。


「その本はね、恋の叶え方が書いてある魔術書……」


 恋が叶う……魔術書…。

わたしは聞き覚えのある単語に、立ちくらみを覚えながらもたどる。


 それはわたしの中で、とても大切なことのように思えた。


「…これが、必要なの?」

 ゆっくりと本に触れようとしたとき。

さきほどの神崎さんの言葉が、静止をかけるようによぎった。


「媚薬…あなたには、もう必要ないはずよ」


 亀のようにひっこめたわたしに、魔女みたいなひとは怪訝そうに覗き込んでくる。


「ほしいなら、あなたにあげるわ」

 甘い誘惑の言葉。


 この本とわたしがナニカをつなぐものだとはおもう。

けれど、必死にナニカが邪魔をする。


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