【短編】お願い、ヴァンパイア様
ゆっくりと顔をあげると、すこしまぶしそうに目を細めた『彼』がいた。
「泣くな」
――知ってる。
あなたが泣き顔に弱いことも。
あなたがとても寂しがりやなことも。
そして―……
「探す気、なかっただろ?」
あなたは愛したら、最後まで愛し続ける人。
意地悪な甘い声は胸の奥まで刺激し、まるで声すらも奪ったかのよう。
「………レ、ン」
わたしの大好きなレン。
「約束どおり、俺の『恋心』……奪ってみろよ」
わたしはもう一度始める。
ううん、わたしはとっくに始まっていた。
レンが「泣くな」と寂しげに笑ったあの日から。