きみのて
バイト先のビルを出ると、陸が待っていた。

わたしを心配して、迎えに来てくれていた。

食事に付き合ってくれるつもりだ。


わたしは陸と食事を摂るのが嫌になっていた。

箸を持つ手も、受ける唇も、ぽろぽろこぼす汚い姿を見られたくなかった。


「わたし、バイトを続けられないかもしれない。」


ぽつりと言う。


「うん。」
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