きみのて
春よ、恋
意外にも貯金が趣味という美加は、バイトばかりでほとんど午後から大学へやってきていた。
わたしは午前中、授業へ出る以外は軽音楽部の部室で過ごした。
今日はこれからサークルの集合写真を撮るため、同じサークルの光と広間でぼーっとしながら時間を潰していた。
「光はバンドすぐやるの?」
「うん。やる予定。」
「パート何?」
「俺、ボーカルだよ。栞ちゃんもボーカルでしょ?」
「栞は・・・まだ決めてないんだよね。」
「栞ちゃんもボーカルだと思ってたけどね。」
何気なく広間の入り口へ目をやる。
その時、Tシャツにチェックのパンツを履いた、挙動不審な男子が一人、広間に入ってきた。