きみのて
彼は、キョロキョロしながら入り口に一番近いテーブルに着席した。
ああ、こんな人を探してたの。
わたしは彼を一目見て、いきなりそう思った。
意味もわからずわくわくした。
砂浜できれいな貝殻を見つけたときのような。
四葉のクローバーを見つけたときのような。
そんなきらきらした喜びで胸がいっぱいになった。
「あれ、高橋君だ。」
例の挙動不審な彼を見て、光が言った。
「高橋君?」
「最近サークルに入った人だと思う。ちょっと話しかけてくるね!」
人見知りを全くしない光が、彼の元へ行く。
わたしはその場を動かず、じっと高橋君を見つめていた。
彼から目を離すことが出来なかった。