きみのて
「栞って、彼氏いんの?」


竹内先輩家での食事会も終わり、保先輩が家の遠いわたしを車で送ってくれながら聞いた。


「好きな人はいますよ。今日来てました。」


わたしは今日の陸の態度と、光のことを考えていた。


「高橋か。」

「頑張ってるんですけど、まだ付き合えてないんですよ。
彼女と別れたばっかりらしいし。」

「なるほどねぇ~。」

「まだ待っていたほうがいいんですかねぇ。」

「ねぇ、それより栞の住んでる町って、でっかい公園みたいのあるんでしょ?」

「ありますよ。キャンプとかできますよ。」

「行ってみない?今?」


さすがに意味はわかる。


「ははっ。そんな近くないですよ。」

「俺の車、広いしょ?」

「ですね。」


走るラブホってわけか。

こういうのをきっぱり断るのは苦手だ。
正直、断る理由もなかった。


でも、心に陸がいた。

既に心も身体も支配されていることを、

たった今、知った。
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