きみのて
その日の夕方、わたし達は構内の休憩所で待ち合わせをした。
既に授業も終わり、皆帰宅かサークル活動を始めており、休憩所には誰もいなかった。
わたしは先に待っていた陸の隣に座った。
陸は、なんだか落ち着かなそうにタバコを吸っていた。
わたしは陸の手を握った。
それを見て、陸はタバコの火を消した。
「・・・栞。」
「ん?」
「俺達、付き合おうか。」
目線も合わせず、陸が言った。
「本当?」
「うん。」
「本当に本当?」
「・・・嫌なの?」
暫く現状のままでもいいと思いはじめていたはずなのに、なんだか涙が出そうになった。
「・・・嬉しいよ。」
わたし達は手をつないで寄り添った。
わたしはその手から、なんとも言えない感動を味わっていた。
新しい日々の、始まりだった。