きみのて


わたしは走っていた。

陸にクリスマスプレゼントを買うために。


地下鉄に飛び乗り、デパートへ急ぐ。

付き合った頃には、既に陸の誕生日は終わっていたので、これがはじめてのプレゼントだ。


納得のいくものを探したいから、限られた時間なるべく多くの店をまわりたい。


デパートへ入ると、まず時計店へ入った。

プレゼントに、腕時計を考えていたからだ。


いつも身に着けてもらえるものがいい。

本当はお財布をあげたかったけど、今持っているものをとても気に入っているらしかったので、腕時計に決めた。


気に入ったものを見つけられるかどうか。

あまり大きい文字盤じゃないもので、そんなに服をえらばなくて、上品でストレートな…

店内をみまわす。


すると、視界に飛び込んできたものがあった。



「あっ…これ、みせてください。」



シルバーのスタンダードなイネドのそれは、手に驚くほど馴染んだ。

薄いブルーの文字盤が、優しく輝いた。


あちこち店をまわって、時間の許す限り吟味するはずだったプレゼントは、30分足らずで完了してしまった。


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