嫌よ嫌よも好きのうち
友達からは“良くやるね”だとか“もう諦めたら?”なんて言われちゃったりもする。
それは私がどんなに宇野くんに好きだと言っても宇野くんはちゃんとした返事さえもしてくれないからだ。

“宇野くん、好き!”
そう言うと宇野くんはいつも私の事なん見ず真横を通りすがる。
たまにしつこく言うと宇野くんは呆れ顔と怒った口調で“俺はお前なんか嫌い”と口を開く。

それでも諦められないのは宇野くんを運命の人だと信じているからだ。
例え宇野くんがどんなに私の事を嫌がっていても私は宇野くんを運命の人だと思ったんだ。


「優衣ー、また宇野くん女子に話し掛けられてるよ!」


突如、私の目の前に現れたのは親友とも呼べる千波だ。
千波は廊下の方を指差し“優衣も行っておいでよ、話せるチャンスじゃん”と付け足した。


「本当?!行く行く!」


私は勿論風のごとく教室から出ると目の前に集まっている女子の集団とその真ん中に気だるそうに立つ宇野くんを見つけ風の様に走った。


「宇野くーん!」


宇野くんは私の声を聞くなり“うわ、来た”と言わんばかりの嫌そうな表情を浮かべ、スタスタと上履きの音を立てながら女子の集団を抜けて私とは逆方向に歩き出してしまった。


「あーあ、また逃げられたね。」


そんな声が後ろから聞こえたかと思うと教室からちょこんと顔を出した千波が同情の表情を浮かべていた。


「追いかけてくる!」


こんな事で宇野くんと話すのを諦める訳がない。
宇野くんが私から逃げる事なんていつもの事なんだから。

勢い良く足を踏み出し宇野くんが歩いて行ってしまった方へ走り出す。
でも走る程の距離ではなく宇野くんの姿はあっという間に見えてしまった。


「宇・・・。」


いや、名前を呼ぶのは止めておこう。
だって名前を呼んで私だと気づいたら今度は走って逃げそうなんだもん。
私は恐る恐る宇野くんの背後に近づき、そっと手を回す。
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