4月の白い砂浜で
この病室の窓から桜が見えるの。

道路沿いにたくさんの桜の木が並んでいる。

まだ3分咲きくらいかしら。

ちょっと前まで青々に茂っていた緑の中に、1つ2つと桃の色が増えていって、それがまるで、暗闇に浮かんだ蛍の火のように綺麗。

日に日に増えていく花の色を見るたびに思うの。

見たくないなって。

満開の桜を待ち望んでいるんだけど、もっとゆっくり咲けばいいなって。

満開になれば、あとは散ってしまうもの。

散り際の寂しさを、もう感じ始めてる。


陽ちゃん、あたし、癌なんだ。
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