4月の白い砂浜で
手紙はまだ最初の1枚目だったが、あまりの衝撃に思わず目を瞑った。

頭がぐらぐらする。

心臓が激しく鼓動している。

うっすらと額に汗がにじむ。


目を閉じれば、瞬時に律子の笑顔が浮かぶ。

初めて会った夏に着ていた、水色のチェックのシャツを着て微笑んでいる。

最後に会ってから何年も経つけれど、律子の笑顔は今もまったく色褪せない。

手を伸ばせば届きそうだ。


その律子がこの世にはいない?

どういうことだ?


会社から帰宅し、書斎のパソコンの前にその手紙は置かれていた。

「木村律子」と書かれた手紙を、妻はどう思っただろう。

陽平は風呂に入ることも、着替えることも忘れ、ネクタイを緩めたままの状態で、放心したように腰掛け、続きを読み始めた。

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