ワンコ先輩とあたし。
ギィ…………
「香代ー??」
………来た。
足音が部屋中に響く。
それだけなのに、それが恐ろしい…………
あたしは必死に息を殺していた。
少したった後、ドアの閉じる音。
あたしは緊張が切れて、大きく息をついた。
「よかった………」
「やっぱりいた」
「!?」
え!? さっき部屋から出たはず……
「ドア閉めただけだし」
やばい、逃げられない―
「香代~♪♪♪」
もう駄目だ………!!!
その時、学校のチャイムが鳴り響いた。しばらく二人で固まる。
「…………やば…」
遅刻になっちゃうじゃんこれ!!!
まだこの人はやる気なの!?
「………やっべぇ!!
ゴメン、香代を遅刻にさせちゃって!!」
え…………???
なんかめちゃくちゃ恐ろしかったのに…
普通の人……なのかな?
いやいや、先輩は男だ。男は最悪な人しかいないんだ。
きっと素はあっちのほうなんだ。きっと……。
「…けど、教師が教室に着いていなければばれない…かもしれませんよ」
「あそっか。じゃあ……ほらっ、急いで!!!」
部屋のドアを開けて、先輩が手招きする。
なんで男にこんなことされなきゃいけないんだ、あたしは。
…けどそんなこと言ってる場合じゃない!!!
急いで教室に向かわなきゃっ!!!
遅刻するーーっっ!!!