ワンコ先輩とあたし。
「っ、離して下さい!!」
「香代、聞いて?」
「離せっ!!!」
「香代!!!!!」
先輩が大声出すものだから、驚いて声が出なくなった。
「………落ち着いた?」
なによ。この状況で落ち着ける訳ないし…
「あのさ。俺、香代に怒鳴られた時から考えてたんだ。」
……………?
何を???
「今は自分なりに答が見つかったからあいにきた。」
「だから何を!!!」
「香代の男嫌いって、お父さんのせいなの?
本当にそうなの……?」
真っすぐにあたしを見てくる先輩。
あの時に気になってた表情だった。
真剣だけど、少し悲しそうで……
「…そうですよ。あの父親が嫌いだから、同じ男が嫌いなんです。」
「お父さんのこと、本当に嫌い?」
「だから嫌いって言ってるじゃないですか!!」
「よく思い出して!!」
先輩はあたしの肩をぐっと掴んだ。
「香代、本当にお父さんとの思い出は嫌なことだけだったの!?」
嫌なこと…だけ……?
「お父さんのことを最初から恨んだか!?最初から嫌いだったか!?
……ふざけんな!!!
勝手に自分に嘘ついて、本心を消してんじゃねぇよ!!!」
先輩のその怒鳴り声で、
あたしはある記憶がもどってきた。