ワンコ先輩とあたし。
あたしと先輩は、途中まで道が一緒だった。
「今日の香代は優し~な~♪」
「…わかりましたから手は離しませんか?」
先輩は手だけは離していなかった。
なんか恥ずいんですけど……
「香代は俺のだから離さないよ♪」
「いつ決めたんですか…」
「ずーっと前から」
何いってるんだか。
そう思いながらため息をついた。
「そういえば先輩、なんであたしがお父さん好きだったの知ってたんですか?」
「んー、なんとなく。」
………なんとなく?
「……つまり確信はなかったってことですか?」
……呆れた。
じゃああたしってただの偶然で男嫌い治ったの?
なんかショック……
「いや、けど確信はあったよ。」
「なんでですか?」
「だって香代、あの時迷惑とか言ってるのに顔は泣きそうだったし」
……………え?
あたし、そんな顔してたの?
「だから何かあると思って止めたらそのこと話してくれて…」
「じゃああの時の嘘だろって言葉は……」
別にフラれたことじゃなくて………
ワンコ先輩は変だと思う。
だっていつも馬鹿っぽいのに、時々しっかりしてるんだもん………
あほ顔だと思っていた先輩の顔は、今はなぜか凛々しく見えた。