満月の銀色ススキ
リーンと、鈴虫が鳴く。
涼しげなその澄んだ音に耳を傾ける。

もともと、地元の望月は草むらも虫もそれほど苦手ではない。
むしろ、草のにおいも土のにおいも好きだった。

昼間もそれほど陽が当たらなかったのだろうか。
草の生えたその場所は涼しかった。

月明かりに輝く黒。
微かに見える世界の色。


(あぁ、帰ってきたんだ…)


そんな実感が今更ながらに生まれてきた。

既に昼間、家族と顔を合わせはしゃいでいるのに。
そう思って小さく笑う。
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