満月の銀色ススキ
ふわりと頬にあたたかさを感じた。

視線を上げると、ススキの金色の瞳にぶつかる。

月明かりのような優しいさを含んだ微笑み。
そのススキの手が、頬に触れているのだと理解するのに時間がかかった。


「触れたかったのは、俺の方だ」



自嘲するようにそう、ススキは瞳を細めた。

望月は頬に手を伸ばす。
頬ではなく、自分より少し冷たい指に触れた。


「…ススキさんの手、優しいね」


漸く捕まえた手のぬくもりを頬で感じる。
心地よさに瞳を閉じれば、指先が微かに震えるのを知る。

生きていると感じる手だった。
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