満月の銀色ススキ
三章
ジリジリと蝉が鳴く。
陽に肌を焼かれるのに拍車がかかるようだ。

ススキは樹の上で、陽炎が立ち上る道を見ながらそう思った。

秋晴れの青空。
白い雲は流れるように空を滑る。

ぼんやりと、それを見ていたススキはふと躰を起こした。


「よぉ」


向けられた声に顔を向けた。


「よぉ、西の」


ススキは見知った男に口角を上げた。

ススキよりも色素の薄い白銀の髪。
瞳は、水のように透き通った灰色。

それらを兼ね備えたのは、西の果てで最も力のあるアヤカシだった。


「今日は何の用だ」


そう訊ねれば、面白そうに男は笑った。
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