満月の銀色ススキ
「クソ真面目な北の若狐が人間に飼い慣らされたと聞いてな」
男はそう言いながら、何かをススキに放った。
それを受け取ると、揚げ特有の香りがする。
ススキは不機嫌に答える。
「九重…若いといっても百や二百違うだけだろ」
「少なくとも、俺よりは下だ」
九重と呼ばれた男はくつくつとからかうように笑う。
「それより、『飼い慣らされた』というのを否定しないってことは、噂は事実らしいな」
「飼い慣らされた覚えはないよ」
ススキは、九重が紡いだ言葉をさっくりと否定した。
灰色の瞳がススキを映す。
その目が僅かに細められた。