満月の銀色ススキ
九重は楽しんでいた。

ススキを昔から知っている。
とても聡明であるが、頭が固い。

アヤカシと人間が関わってはいけないという理があれば、何処までも守り続ける男だ。

浮いた噂一つ聞いたことがなかったというのに、人間と関わったという噂が耳に入る。
何事かと興味本位で顔を見に来てみれば、それは事実であるらしい。

飼い慣らされた覚えがないということは自分の意思であり、相手の意思もあるということ。
当人のススキはその言葉に含まれる意味を理解していないのだろうが。


「どんな人間だ?」


「は?」


「おカタい若狐が禁を破った人間」


言葉に、ススキは眉を寄せた。
それをやはり面白そうに九重は見て、三日月に曲げた口の形を崩さなかった。
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