満月の銀色ススキ
「スースーキーさーん」
楽しげな声が響く。
ススキは僅かに表情を変えた。
それにニヤリと九重は笑う。
「間がいいな」
「よくない…」
諦めたように呟いた。
トンと九重はススキの隣に足を着ける。
遠くを見る仕草で手を翳した。
「早く帰れ。長居すると奥方も心配するだろう」
そう言ったのは、早く立ち去って欲しかったからだ。
九重は無類の人間好き。
禁や理など見向きもせず、感情のまま触れ合う。
要は、慣れないと九重と話すのは疲れるのだ。
数百余年、関わってきたススキは今でも慣れないのだが。
望月に同じ想いをさせるのは嫌だった。