満月の銀色ススキ
「…ススキ」
望月の声が響く中。
九重は静かに視線をススキに移した。
先刻までの声音ががらりと変わり、ススキは反射的に顔を向けた。
かち合った瞳はもう笑ってはいない。
「関わるなとは言わない。ただ、あまり情を入れ過ぎるなよ?」
「何…?」
「後で泣きたくなきゃ、情をかけ過ぎるなって言ったんだよ」
言葉の意味がわからず、ススキは眉を寄せた。
九重はそんなススキを真っ直ぐ見つめた。
数秒の間。
ふっと、九重は目尻を緩めた。
「さあて。遅くなるとツレが怖いからな。帰るか」
「おい、九重…」
いつもの口調に戻り、背を伸ばした九重を引き止めようとした瞬間。
強い風が吹いて、散る木の葉と共にその姿は消えた。