満月の銀色ススキ
ススキは目を丸くした。


「あのね、今日は母さんが蜜柑くれたの。一緒に食べようと思って持って来ちゃった」


そう、後ろ手に持っていた包みを見せる。
お陰で、頬に熱が溜まったのを気付かれることはなかった。

包みを開けば、夏蜜柑が二つ覗いた。


「いい蜜柑だね」


ふんわりと、太陽のにおいを感じて、ススキは言った。
蜜柑は輝くようにオレンジ色を放っている。

一つ手に取ると、甘酸っぱい香りが広がった。


「甘いって、母さんが言ってた」


薄い皮を剥きながら、望月は楽しそうに言った。

夏蜜柑が好きなのだと話す。
ススキは相変わらず微笑みながら聞いていた。
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