満月の銀色ススキ
「…今日はもう帰らなきゃ」
夏蜜柑を食べ終え、その残り香を楽しみながらぼんやりとする。
そんなことをして数時間、望月は呟いた。
ススキは空を見上げる。
まだ陽は明るかった。
白む様子も見られない。
「今日は早いね」
「うん、残念」
眉を少し下げて、望月は首を傾けた。
「今日は親戚が集まる日みたいなの。久しぶりにおじさん達の顔見て来るね」
望月は残念そうに肩を落とす。
だが、すぐに笑顔に戻った。
ススキは立ち上がった。
「…送ってくよ?」
「ううん、まだ明るいから平気。いつも送ってもらってばっかじゃ悪いし」
とん、と望月は一歩前に出た。
くるりと身を翻してススキに向かう。
また明日と告げて、望月は駆けていった。