満月の銀色ススキ
雨は昼を過ぎても止まなかった。

ススキは整った顔を酷く歪めていた。

辺りは夕暮れのように薄暗い。
人の通りは少なく、蛙が一匹、道を横切った。

望月も、今日はまだ顔を見せていなかった。

今日は雨。
人は濡れれば風邪を引く。

頭では理解している。
だが、ススキの心はざわついていた。

ぴちゃりと一歩、地面に足を着けた。

わかっている。
わかっている。


(…なのに)


歩みは止まらない。

アヤカシは人間の世に近づいていくべきじゃない。
お互いの世界は同じ場所にあり、しかし確立しているものだからだ。

だから、関わってはいけないという理も存在する。

しかし気付いたときは、既に望月の家の前だった。
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