満月の銀色ススキ
柔らかく風が通り過ぎた。
その風に乗って薫るにおい。

それに、二人は振り返った。


「望月…!」


弾けたように、ススキはそちらに駆けて行った。
その背中を見送った九重は、別の方向に向かう。

木の葉が重なり合う影の中。

九重は目的の人物を見つけた。


「また会ったなぁ、番人」


「…邪魔をするな」


少し目を見開いた黒髪の人物。
だが、すぐに不機嫌そうに呟いた。

九重は笑う。


「邪魔なんかするつもりねぇよ。面白そうだから見に来た、それだけだ」


すぐ横で、足を組んで座った男に。
番人は誰にも気付かれないように息を吐く。

どうしてこの男はこうなのだろうか。

不意に浮かんだこと。
しかし、すぐにそれを打ち消した。

集中しなければいけない。
自分の任務に。

そう言い聞かせて息を吸うと、瞳は真っ直ぐと前を向いた。

隣でそれを見ていた九重は口角を上げる。

間もなく。
期限は一日へ迫っていった。
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