緑ノ刹那
『フィリ』


フィリアは振り返らない。

じっと、後ろを向いたまま、動かないでいる。


『…………フィリア』


彼女の本当の名前。
呼ばないで欲しいと言われ、その理由を聞いて、もう呼んでもいいと言われてからも、リーフは呼べなかった。
それを、今言う。

ピクリと、その体が震える。
けれど、まだ振り返らない。


リーフは尚も続けた。
『―――キミのことが好きだよ。
過去も、未来も、君と僕の立場も、全部関係無い。
ただ、僕は、フィリアが好きだ』



初めて、フィリアが振り返った。
泣きそうな顔をしている、と思った。
でも、これ以上は何も言わない。

そのままの顔で、フィリアは呟いた。

『――そう』


それだけ。
たったそれだけの言葉でも、リーフは満足だった。


物語の続きは、これからなのだから。
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