緑ノ刹那
謁見の間の玉座から、リーフは大臣に案内されやってきたシオンをしげしげと見つめた。

トウサ王国特有の、茶の髪に黒い瞳。
年齢は、おそらく同じ位だろう。
他国の王の前でも堂々としている姿は、王太子という立場にふさわしい。



リーフは背筋を伸ばし、真剣な声で語りかけた。


『リョクラへようこそ、シオン殿下。
そして魔物の件、誠に申し訳ない。
妹殿下もお疲れでしょう。
今日のところはどうぞ、部屋を用意させたので、おくつろぎ下さい』


そう言ったリーフに、シオンはどこか焦った様な顔をした。

リーフは首を傾げる。


『どうかされましたか?』


問いかけたリーフに、シオンはどこか落ち着かない様子で辺りを見回し、そして口を開いた。


『……我々を助けて下さった緑王に、礼を述べたいのです。
どこに?』


リーフは嫌な予感がした。


シオンの、あの表情―――

あれは、まるで………




そして、そんな予感ほど良く当たるものだと、リーフはその後身をもって知る事になる。
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