緑ノ刹那
『じゃあ、参ったって言った方が負けよ。
二人とも、あんまり怪我しないようにね!
なんと言っても、この後仕事があるんだから』



やる気満々で試合を始めようとするリーフとシオンには、ニコニコと笑いながらのフィリアからの言葉が痛かった。







『始めっ!!』


バルドの掛け声と共に、刃が交わる。

シオンは冷静に分析した。


見たところ、リーフも王族の義務として、剣はつかえるらしい。

なかなかの腕の様で、実力は自分と同程度のものだろう。



―――だか。

圧倒的に足りないもの。
それは、経験。



シオンの国、トウサは砂漠に囲まれた小さな街が点々とあり、その複数の部族同士が集まってできた国だ。


種族の異なる者達が集まれば、時に争いが起こる。


シオンは王族として、いくつかの暴動を鎮めたこともあるのだ。




(こんな、平和な所でのうのうと育った奴には、負けない)









次第に、シオンが圧し始めた。

リーフの表情に、焦りがうまれる。



その焦りが、原因となる。


リーフは勝負に出た。

刃を大きく振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろす。



しかし、シオンから見れば、それは隙だらけだった。


すかさず振り下ろされた刃をよけ、そのままリーフの後ろに回る。

いきなりの事に、振り返るのが追いつかなかったリーフは、剣をはね飛ばされてしまった。


シオンが刃を振る。


リーフの
『参った!!』
という声は、耳に入らなかった。
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