緑ノ刹那
――――キィンッ
澄んだ音が聞こえて、気がつくとシオンは、フィリアの手によって地に組み伏せられていた。
フィリアの片手はシオンの首に伸びていて、その気になればすぐにでも命を奪える。
もう片方の手には、銀に鈍く光る刃を持っていた。
シオンの剣は、先程折られたのだろう。
根元から刃の部分が無くなっており、柄だけとなっていた。
そんな状況だというのに、シオンは自分を見下ろすフィリアに胸が高鳴った。
フィリアが、気持ちを落ち着かせるかの様に長く息を吐いた。
そして、すぐさまシオンから離れる。
そのときになって漸く、他の三人は呪縛から解放されたかの様に動き出す事が出来た。
起き上がるシオンに、フィリアは深々と腰を折った。
『申し訳ありません、シオン殿下。
ですが、お許しを。
我々"王"とは、この様なモノなのです。
私は、例え他意が有ろうと無かろうと、自らの主を傷つける者には、体が反応してしまいます。
――他国の……我が卷族が守護する王族であろうと、我が王に仇なす者は、私が始末いたします。
どうぞ、覚えておいて下さいませ』
その、冷徹な瞳
まさに、魔王
シオンの背に汗がつたう。
それでも彼は、微笑んで頷いた。
彼の王族としてのプライドが、そうさせたのだ。