緑ノ刹那
大樹が、笑った気配がした。
"…そう。
じゃあ、ここでさよならだ。
でも、これは別れじゃ無い。
それも覚えていて。

――大好きなフィリ。
君の旅の無事を祈っているよ。
どうか、何者も君を傷つけず、何物も君を惑わさぬように"



―唐突に、すがりつきたくなった。
その太い幹に寄り添って、ここで生きていけたら、どんなに幸せか。
でも、フィリアには出来ない。

リーフ達と行くと、もう決めたのだ。



精一杯虚勢を張って、笑った。

『さようなら』



もう、振り返らない。
絶対に泣かない。


(私は自分の一番の理解者をおいて昨日逢ったばかりの彼等と行くんだから)



そのまま、家まで駆けた。

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