緑ノ刹那
『でもサヤ、"彼"の事はいいの?
契約もしたばかりだし、なにより―――』


『いいんだ。
あんな奴などより今はフィリアの方が大切』


フィリアの言葉を遮って、サヤはぶっきらぼうに、しかし優しさが籠もった声音で言う。



『―――ありがとう』


フィリアもやっと笑顔を見せた。



『――さて、落ち着いたところで…』


そう言いつつ、自分の主であるシオンを見つめるレイ。

その顔が、悪巧みをしようとしている子供の様に見えるのは気のせいだろうか。



レイはにっこり笑ってキッパリ告げた。


『シオンは国に帰ろうか』


『―――!!?』


シオンの顔色が変わった。
一気に青くなったかと思うと、次の瞬間思い直したかの様に、レイを睨みつける。


『おかしいだろソレ。
国は任せたはずだ。
つまり、今、この時、
トウサ王国第七十三代国王は、休暇中だ!!
それが何で国に帰って政務なんかしなくちゃならないんだ』


『いやいや、この国への訪問は外交だから。
決してシオンのバカンスじゃないから』


『認めないぞ!!』


『俺はね、これからこの国に残ってこの事件をフィリアとサヤと解決しなきゃなんないんだよ。
でー、そうすると、国任せる人いないだろ?
そしたらもうさ、シオンしかいないって事で。
お前の妹のサライアはもうとっくに帰ってるぞ。

……と、いうわけで
強制送還ー』



一気にまくし立てたレイが、まだ文句を言っているシオンに手を翳すと。


シオンの姿はどこにも見あたらなくなった。
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