緑ノ刹那
しかし、青年は所詮は人間。
すぐに老いて死んでしまいます。
ふたりの間には男の子が一人生まれましたが、女神は姿はそのまま、王だけが段々と老いていきました。
王の死の間際、女神は涙を流しながら、
『貴方が私を置いて逝っても、私はここにいます。
貴方が私を忘れても、私は覚えています。
貴方の声、姿、心。私は忘れません。
さようなら、愛しい人。
願わくば、次に生まれ変わった時も、貴方と一緒にいられますように。
私は、………で……を…………だから…。』
と言って、王に口づけました。
その瞬間、あたりが眩い光に包まれ、その光がおさまった後には、王の亡骸だけが残されていました。
女神はどこへ行ったのか。
彼女は最後に何を言ったのか。
それを知る者はもう誰もいません。
おしまい。