緑ノ刹那
『僕はリーフ!!
こっちはバルドって言うんだ!!
ディーンはどうして王都に!?』


その必死な様子に、バルドはため息をついたが、幸か不幸かフィリアは全くリーフとディーンの不穏な空気に気づかなかった。


『僕は王家御用達の宝石職人見習いで、王宮に商品を届けに。
本当は師匠が来るはずだったんですけど、つい先日腰を痛めちゃって。
それで代わりに僕がここまで。』

『ディーンはもう仕事してるの?
すごいわね』


フィリアが感心したように言った。
それにディーンは苦笑して、

『いえ。
まだまだ覚える事がたくさんあって、師匠には毎日のように怒られてますよ。"この未熟者!!"って。』

と言った。
そして、思い出した様に懐から何かを取り出す。


『――そうだ!!
フィリ、これ、よろしかったら貰って下さい。』


首をかしげたフィリアの手に渡されたのは、小さなエメラルドが精緻な銀の台座に乗っている、綺麗なネックレスだった。


『……こんなの貰えないよ!!』


一瞬その美しさに見とれたフィリアだったが、ハッと我に返り慌ててディーンに返そうとする。

しかしディーンはそれを押しとどめて、フィリアの首にそっとネックレスをかけた。


『貰って下さい。
フィリに持っていて欲しいんです』



『……ありがとう』

フィリアはやわらかく笑った。
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