緑ノ刹那
『……』
『まぁまぁ…』

初々しい二人から少し離れた場所で、苛ついているリーフとそれを宥めるバルド。


『落ち着けリーフ。
ただの"お礼"だろう』

『でもバルド!!
あれが"ただのお礼"に見える!?
僕は絶対に下心があると思う』


(お前だってあるだろう)
と思ったが心優しいバルドは黙った。

それに気づかず、尚も言い続けるリーフの目の前に、いきなりフィリアが現れた。


『リーフ』

『うわぁ!!
…ってフィリ。
どうしたの?ディーンは?』

もしや居なくなったのだろうか、という期待を込めた言葉は、フィリアの隣にやって来たディーンによって打ち砕かれた。


『リーフ達は今晩泊まる宿は決まってますか?』


『ああ。
街はずれに知り合いの宿があるから、そこに泊まろうと思ってるよ。
それがどうかしたの、ディーン?』


リーフの質問に答えたのはフィリアだった。


『それが、さっき転んだ拍子にディーンが足を捻ったみたいなの。
そうなったのも半分は私のせいだし、治療してあげたいな、と思って』


『へぇぇ…そうなんだ』
リーフは引きつる顔の筋肉を総動員して笑顔をつくった。


『では、4人で泊まるとするか。
宿まで案内しよう』


4人はそろって宿へと向かった。
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